BtoB EC公開1年後に差がつく|データで見つけて直す改善の回し方

ECデータ 受発注DX

同じ時期に、同じような規模でBtoB ECを立ち上げた2社が、1年後にはまったく違う状態になっていることがあります。システムの出来にも費用にも大差はない。それでも、一方はWeb経由の注文が大半を占め、もう一方は公開当時のまま伸びていない。

分かれ目は、公開後にサイトを見直し、少しずつチューニングしたかどうかにあります。今回は、その改善を支えるデータの見方を取り上げます。

公開後に伸びるかどうかは、改善で決まる

差が現れるのは、公開から3か月を過ぎたあたりです。案内や説明会といった立ち上げの動きが一段落し、日常業務が戻ってくる頃。ここで手を止めた会社は、その時点の状態で固定されます。

一方、伸びる会社が公開後にやっているのは、取引先への働きかけを続けることだけではありません。むしろ効いているのは、サイト上に残ったデータを見て、使いにくいところを少しずつ手直しすることです。本稿では、そのために何を見て、どう回すのかを整理します。

「使いにくい」は、言われないまま離脱に変わる

公開直後のシステムは、どれだけ準備しても不便な点が残ります。よく使う商品が探しにくい、注文履歴からの再発注が分かりにくい、単位や入数の表示が現場の呼び方と違う。厄介なのは、取引先がその不便を口に出さないことです。わざわざ「使いにくい」と伝えてはくれず、静かに電話とFAXに戻ります。

つまり、苦情が来ないことは、うまくいっている証拠にはなりません。声を待っていると、気づいたときには利用率が下がっています。だからこそ、言われる前に気づく必要があります。そして幸いなことに、取引先が何に迷い、どこで諦めたかは、サイト上の記録として残っています。

公開後に見るべき4つのデータ

公開後に確認したいのは、売上金額ではありません。次の4つは、いずれも「次に何を直すか」に直結します。

見るデータ分かることそこから打つ手
取引先ごとの利用状況誰が使い、誰が離れたか未利用・離脱した先に個別に連絡する
サイト内検索の履歴何を探し、どこで見つからなかったか呼び方の違いを商品名やキーワードに反映する
カゴ落ち・離脱の発生箇所どの画面で手が止まったか入力項目や導線を見直す
再発注機能の利用率履歴からの再注文が使われているか定番発注の導線を前に出す

とりわけ効くのが、サイト内検索の履歴です。取引先が入力した言葉と、その結果が「該当なし」で終わった件数を見ると、自社の商品登録名と取引先の呼び方がずれている箇所が具体的に浮かび上がります。商品名に別称を足す、検索用のキーワードを登録する——多くは大きな改修を伴わずに解決できます。

同じように、カゴ落ちが特定の画面に集中しているなら、その画面の入力項目が多すぎるか、必須項目が分かりにくい可能性があります。データは「なんとなく使いにくい」を、直せる形にまで具体化してくれます。

データを改善に変える、月次の回し方

データは見ること自体が目的ではありません。大切なのは、見たあとに直すところまでを、毎月の業務として回すことです。
進め方はごく単純で構いません。

①月に一度、前掲の4つのデータを確認する
②直せば効果が大きく、手間の小さいものから3つほど選ぶ
③翌月までに反映する
④その結果、検索の「該当なし」件数や離脱がどう変わったかを見る

この繰り返しです。
重要なのは、一度に大きく直そうとしないことです。半年に一度の大きな改修より、毎月3つずつの小さな修正のほうが、結果として使い勝手は良くなります。改修を待つあいだにも、取引先は不便なまま使い続けているからです。

改善を続ける体制と、その先のデータ活用

この回し方を続けるには、担当と時間、そして小さな改善に使える予算が必要です。構築費用を使い切った状態では、データを見る人がいなくなります。公開後1年の改善活動まで計画に含めておくことが、投資の回収を早めます。

弊社が構築後にサイト内検索の分析や、UX/UIの継続的な改善を支援しているのも、この積み重ねが1年後の差になると分かっているからです。大きな改修ではなく、毎月少しずつ直していくほうが、使われるサイトに近づきます。

そして、こうしてデータを見る習慣がつくと、次の段階が見えてきます。サイト上の行動データだけでなく、受注データや在庫データと組み合わせれば、「どの取引先の発注が落ちているか」「どの商品が欠品しやすいか」といった、経営の判断につながる問いにも答えられるようになります。

まずは、直近1か月のサイト内検索で「該当なし」となったキーワードを抽出してみてください。取引先が何を探して見つけられなかったのか、その一覧が最初の改善リストになります。

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〈筆者プロフィール〉
ECコンサルタント K.H

大阪大学を卒業後、新卒でゲーム会社にプランナーとして入社。2023年に株式会社久へジョインし、データアナリストとしてキャリアをスタート。現在はECコンサルタントとして、データドリブンなアプローチを武器に、クライアントの自社公式ECサイトを中心に分析から改善・効果検証まで一貫して支援。2026年より「ブランドEC成長支援室」を兼務し、伴走型コンサルタントとして日々の試行錯誤を重ねながら奮闘中。
プライベートでは茶道表千家講師の顔を持つ一方、アマチュアキックボクシングで心身を鍛える一面も。