長年のブランド公式EC(自社ECサイト)における継続支援で培ったノウハウと実行力を強みに、大手メーカーやブランド保有企業の主幹として、売上向上に直結する改善施策を行ってきたマーケティングチームによる最前線のデータ活用実績とナレッジをベースに、「ECデータ・指標」と連動した「打ち手(改善メソッド)」を提示・解説していきます。
①LPのパーソナライズ化
ECサイト運営において、初めてサイトに訪れた方を購入に繋げることは容易はありません。一般的な指標で訪問した方から購入に至る割合(購入率・CVR)は、1~3%を想定されています。この比率を1%でも2%でも高めることができれば、店舗運営において売上だけでなく利益にも大きく貢献します。
そこで今回紹介したい打ち手は「流入キーワード別にLPをパーソナライズ化」を提言・解説していきます。
リアル店舗での接客では当然のおもてなし・接客対応ですが、来店したお客の目的やニーズを素早くくみ取りながら、それに合わせた提案を行っていきます。それと同じように、ECサイトでも「流入意図に合わせて広告とLP(初めて辿り着くページ)を最適化し、CVR(購入率)向上により新規獲得単価の改善を実現していきます。
よくある課題として、ECサイトに広告費を投じて集客を行っているものの、「クリックはされるが購入に繋がらない」「CPA(獲得単価)が高止まりしている」ということがあります。多くの場合、その原因は「ユーザーの流入意図と、LPの内容のミスマッチ」にあります。
ECデータでは「流入キーワード」が計測可能であり「ユーザーのホンネ(意図)」をデータから読み解き、それに応じたLPのパーソナライズ化を行うことで、離脱を防ぎ、CVRを改善する打ち手について解説します。

「画一的なLP」では売れにくい例として、ある美容液を販売しているとします。ユーザーAは「30代 乾燥肌 対策」と検索してクリックしました。ユーザーBは「(競合商品名) 比較」と検索してクリックしました。
この2人が、全く同じ「商品画像と価格がドーンと表示されたLP」に着地した場合、どうなるでしょうか。
ユーザーA(悩み解決層):「この商品が私の乾燥肌にどう効くの?いきなり売り込み?」→ 離脱
ユーザーB(比較検討層):「他社と比べて何が良いの?成分の違いは?」→ 情報不足で 離脱
これが、「LPの内容が画一的であることで離脱率が高い」ということになります。
ユーザーは検索キーワードという形で「自分が知りたいこと」「解決したい課題」を意思表示しています。それに対して、受け皿となるLPが応えていなければ、それは実店舗で「履きやすいスニーカーを探している」と言った客に「ビジネスシューズを提示する」。これでは接客が成立しません。
あるべき姿は「流入キーワードやオーディエンス属性に基づいて広告とLPの訴求を一致させ、ユーザー体験を最適化すること」です。これを実現するためのECデータ分析ステップを見ていきましょう。
チェックポイントデータ:3つの視点で分析する
LPのパーソナライズ化を進めるにあたり、確認すべきデータは以下の3点です。これらを掛け合わせることで、どのキーワードに対して、どのような対策を打つべきかが見えてきます。

■ECデータ活用ポイント1
- 流入キーワード 別: セッション数
- 流入キーワード別:ユーザー数
~キーワード別の母数・需要規模を把握する~
まず行うべきは「優先順位付け」です。無数にある検索キーワードのすべてに対応する専用LPを作るのは現実的ではありません。Google Analyticsや広告管理画面のデータから、流入キーワード別のセッション数を確認し、ボリュームの多い「ビッグワード」や「主力キーワード群」を特定します。
■ECデータ活用ポイント2
- キーワード別: LP到達率
- キーワード別:滞在時間
- キーワード別:直帰率
~LPの初期マッチ度合いを判定する~
次に、特定した主要キーワードごとに、以下の指標を確認します。
LP到達率/直帰率: ここが悪い場合、広告のクリエイティブ(訴求内容)とLPのファーストビュー(FV)が一致していない可能性が高いです。「広告で約束したことが、LPの冒頭で答えてない状態で」状態です。
平均滞在時間: 直帰せずにある程度滞在しているのにCVしない場合、ファーストビュー訴求は合格点ですが、その後の「説得コンテンツ(ボディコピー)」がユーザーの疑問に答えきれていない、あるいは価格や特典(オファー)が魅力的でない可能性があります。
「ボリュームは多いのに、直帰率が極端に高いキーワード」は、効果がでる可能性が高いキーワードとして優先的に対処します。
■ECデータ活用ポイン3
- キーワードの検索意図分類
~LPの訴求要素配置(比較表、レビュー、行動喚起)を調整する~
キーワードデータを「検索意図(インサイト)」に基づいて以下の3つに分類します。
- 情報収集(悩み系):例「肌荒れ 原因」「キャンプ 初心者 道具」
- 比較検討(競合・スペック系):例「〇〇(競合) 違い」「軽量 掃除機 ランキング」
- 購買直前(指名・アクション系):例「(自社ブランド名) 通販」「(商品名) 最安値」
この分類に基づいて、LPの構成要素を調整していきます。
■具体的な打ち手:検索意図別のLP最適化パターン
分類した検索意図に対し、具体的にLPのどのパーツをどう変えるべきか。その「勝ちパターン」を紹介します。
〇パターンA:情報収集層(悩み系キーワード)への対策
「まだ買うかどうか決めていない」ユーザーに対し、いきなり「今なら50%OFF!」とCTA(購入ボタン)を押し付けても逆効果です。
【ファーストビュー】商品の売り込みではなく、「その悩みの原因」や「解決後の未来」を提示するキャッチコピーに変更する。
【コンテンツ】商品スペックよりも、「なぜその悩みが起きるのか」「この商品がどうアプローチするのか」というメカニズムの解説を多めにする。
【CTA】ハードルを下げる。「購入する」ではなく「詳細を見る」「診断する」などのマイクロコンバージョンを挟むか、「お試しセット」などの低価格オファーを提示する。
〇パターンB:比較検討層(カテゴリ・競合系キーワード)への対策
ユーザーは複数のタブを開いて比較しています。自社を選ぶべき理由を論理的に提示する必要があります。
【ファーストビュー】カテゴリNo.1の実績、権威性(医師推奨など)、具体的な数値メリット(〇〇%カットなど)を強調する。
【コンテンツ】「他社との比較表」をLPの上部に配置する。自社の強みが一目でわかるようにする。
【レビュー】具体的な使用感や、競合から乗り換えた人の声をピックアップして掲載する
〇パターンC:購買直前層(指名系キーワード)への対策
この層は買う気満々です。余計な情報はノイズになります。
【ファーストビュー】商品画像と明確なオファー(価格、特典、クーポン)。「公式サイト限定」などの文言で信頼性を担保します。
【CTA】ファーストビュー直下に強力なCTAボタンを設置。「最短明日お届け」「送料無料」などのメリットをボタン周りに配置する。
【フォーム】入力の手間を極限まで減らす。LP一体型フォームなどを活用し、遷移をさせない。
ここまで、さまざまな打ち手を提示してきましたが、すべて対応することは現実的ではありません。まずはファーストビューのキャッチコピーだけを変える。 広告のキーワードと全く同じ文言をファーストビューに入れるだけで、ユーザーは「自分が探していたページだ」と安心し、直帰率が下がりますので、データを確認しながら打ち手から優先度を決めて対応していきます。
改めて、ECデータは「おもてなし」のためにあると考えていただきたいです。本質は「デジタル上での接客(おもてなし)」です。
実店舗の優秀なスタッフは、お客様の一言目(流入キーワード)を聞いて、瞬時におすすめする商品や説明のトーン(LPの内容)を変えています。これをECサイト上で実現するのが、今回の「キーワード別のLPパーソナライズ化」です。
流入キーワードとLPの整合性を見直すことは、新規の広告予算をかけずにCVR(購入率)を向上させ、CPA(獲得単価)を引き下げる最も確実な「投資」となります。まずは、最もボリュームの多いキーワードをデータで捉えて、流入先ページを見直しながらデータで検証・改善することから始めてみましょう。
■筆者プロフィール
株式会社 久(きゅう)
ブランドEC成長支援室 室長 兼 EC経営コンサルタント
立川 哲夫(たつかわ てつお)
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ECマーケティング×企業経営に精通したスペシャリスト
リテール業界に10年従事後、15年以上にわたるECビジネス推進およびECマーケティング支援経験を持つコンサルタント。多様な業界・企業規模における経営課題を整理し、ビジネスモデルの構築、戦略立案、実行支援に携わる。特に、EC・O2O・デジタルマーケティング領域での専門性が高く、EC事業を起点にして企業のビジネス拡大を実現。
大手EC総合支援企業において、10年以上にわたり経営幹部として新規事業開発や事業拡大に従事し、企業のブランディングやマーケティング統括を担当。執行役員として東証グロース市場への上場も経験。その後、外資系コンサルティングファームにてECビジネスの変革支援にも関わり、企業変革期における業務推進や社内体制整備、人材育成にも関与し、総合的な経営支援スキルを磨く。5冊のECマーケティング関連書籍の執筆・編集に関わり、EC事業戦略・売上アップの法則を凝縮し、知見の普及にも貢献。 その他、日経主催の講演会・ECセミナー講師、日経クロストレンド・月刊ネット販売・日本ネット経済新聞などへの寄稿実績も多数。