ブランドEC成長を加速させる「140のチェック項目解説」②販売チャネルの設定

ブランドEC ECマーケティング

本コラムでは、株式会社久のブランドEC成長支援室が開発・整理した、ECビジネスおよびECマーケティングにおける変革と成長を実現するための『5つの戦略と7つの戦術』フレームワークと連動したチェック項目を提示しながら、活用ポイントを解説していきます。
戦略(Strategy)は目的達成のための大枠の方針・方向性を示し、通常は1年〜3年先を見据えた項目になります。一方、戦術(Tactics)は戦略を実現するための具体的な手段であり、3か月〜1年程度で実行可能な項目を指します。


【戦略】②販売チャネルの設定

2回目は、重要度Ⅱ【戦略的項目】の「販売チャネルの設定」のチェック項目の活用ポイントになります。

ECにおけるチャネル戦略は、単に出店先を増やすことではありません。各プラットフォームの特性を理解し、自社のブランド体験を損なうことなく、いかに顧客との接点を最適化するかが問われます。


【販売チャネルの役割定義】を確認する項目として

12.ブランド公式EC、楽天市場、Amazon、他モール、SNS系などの販売チャネルが決まっているか

13.EC販売チャネル別の目的・役割が明確になっているか

14.販売チャネル別の比較・競合となる企業・サイトの設定・分析ができているか

12、14、15の項目は「目的を持って顧客接点の場所を決める」です。
例えば、「楽天市場は新規獲得の入り口」「ブランド公式ECはLTV(顧客生涯価値)を高めるファン化の場」といった役割分担が必要です。すべてのチャネルで同じ施策を打つのではなく、各モールのユーザー属性や競合状況を分析した上で、投資対効果と顧客接点を最大化する視点で決めていきます。


【接点の統合とOMO】を確認する項目として

15.公式アプリの目的・活用戦略、店舗連携、コンテンツ設計など決まっているか 

16.実店舗との在庫・顧客連携(O2O戦略)を設計ができているか

17.コーポレートサイト・アプリ・SNSとの連動・誘導設計ができているか

13、16、17の項目は「顧客体験のシームレス化」です。
消費者は、SNSで商品を知り、実店舗で確認し、アプリで購入するといった複雑な動きをします。「店舗には在庫があるのに、ECにはない」といった機会損失や、「実店舗の購入履歴がECに反映されない」といった体験の断絶を防ぐための設計図が必要です。チャネル間を回遊させる「動線」の太さやスムーズさが、ブランドへの信頼を高めることに貢献します。


【将来の拡張性と社会的責任】を確認する項目として

18.多言語/多通貨対応(海外販売を想定した表示・決済・配送)を想定しているか

19.環境負荷開示(梱包材や配送に関するサステナビリティ方針)の可視化があるか

18〜19の項目は「市場の広がりとブランドへのロイヤリティ」を問うものです。
市場を国内に限定せず、将来的な越境ECを見据えたシステム基盤の検討は、中長期的な成長要素として検討項目に入れておきます。
また、近年のブランド選択において「サステナビリティ」は無視できない要素です。梱包資材の簡素化や配送負荷の低減など、姿勢を可視化することは、特に感度の高いファン層に選ばれるための必須条件となりつつあります。

以上が「販売チャネルの設定」の解説となります。チャネルを増やすことは、顧客接点の拡大には重要な役割を持ちますが、管理コストやブランド毀損のリスクも伴います。また、巨大ECプラットフォームを中心とした販売活動は、自社独自の顧客基盤やデータ取得が構築しにくい点も踏まえたチャネル戦略が必要となります。「どこに出店するか」は、売上への影響度・重要度が高い項目になります。それゆえに「なぜそこで売るのか」という戦略的な意図が不可欠となります。

自社のターゲットとなる顧客と接点を作り、心地よく買い物ができる場所はどこか? そして、購入顧客との接点により継続的なブランド価値向上やファン育成につながるか?を、このチェックリストをベースに現在のチャネルの設定を「再定義」することから始めてみてください。

 

■筆者プロフィール
株式会社 久(きゅう)
ブランドEC成長支援室 室長 兼 EC経営コンサルタント
立川 哲夫(たつかわ てつお)

ECマーケティング×企業経営に精通したスペシャリスト
リテール業界に10年従事後、15年以上にわたるECビジネス推進およびECマーケティング支援経験を持つコンサルタント。多様な業界・企業規模における経営課題を整理し、ビジネスモデルの構築、戦略立案、実行支援に携わる。特に、EC・O2O・デジタルマーケティング領域での専門性が高く、EC事業を起点にして企業のビジネス拡大を実現。

大手EC総合支援企業において、10年以上にわたり経営幹部として新規事業開発や事業拡大に従事し、企業のブランディングやマーケティング統括を担当。執行役員として東証グロース市場への上場も経験。その後、外資系コンサルティングファームにてECビジネスの変革支援にも関わり、企業変革期における業務推進や社内体制整備、人材育成にも関与し、総合的な経営支援スキルを磨く。5冊のECマーケティング関連書籍の執筆・編集に関わり、EC事業戦略・売上アップの法則を凝縮し、知見の普及にも貢献。 その他、日経主催の講演会・ECセミナー講師、日経クロストレンド・月刊ネット販売・日本ネット経済新聞などへの寄稿実績も多数。