本コラムでは、株式会社久のブランドEC成長支援室が開発・整理した、ECビジネスの変革と成長を実現するための『5つの戦略と7つの戦術』フレームワークに基づき、チェック項目の活用ポイントを解説しています。
9回目は、戦術項目【実行フェーズ】の「認知・集客設計」です。これまでの回で「品揃え」「売場作り」という、お客様を迎え入れておもてなしするための「店舗側の準備」を整えてきました。
今回はいよいよ、その売場にターゲットとなる見込客を呼び込むための「集客の戦術」項目となります。ECにおける集客とは、単に広告費を投じてアクセス数を増やすことではなく、投資対効果を見極めながら「自社に最適な顧客との接点のルート」を設計・実施することです。
【戦術】⑨認知・集客設計
ECサイト上には、整った売場や商品があっても、存在を知られなければ始まらない一方で、どんぶり勘定の集客は一瞬で利益を圧迫します。3か月〜1年で確実な成果を出すために、認知・集客の設計を3つの視点で確認ください。

【全体計画と投資・効果の可視化】を確認する項目として
| 100. オンラインとオフラインの両面で集客設計・販促計画があるか 101. 各販売チャネル・媒体別の集客戦略・手法が整理されているか 102. 各販売チャネル別の集客目標・投資計画が設定されているか 103. 集客経路別の新規獲得と売上を把握できているか 104. 広告媒体別の流入数・費用対効果が計測できているか 105. 広告目的別のKPI設定ができているか(新規獲得単価、LTVなど) |
100〜105の項目は「集客の戦略と計測の仕組み」です。
自社ECや各モールなど、マルチチャネルで展開する現代のECにおいて、場当たり的な集客は命取りになります。オンラインとオフラインを連動させた全体計画を定め、どの経路にいくら投資し、どれだけの新規獲得や売上に繋がったのかを「見える化」することが大前提です。CPA(新規獲得単価)だけでなくLTVまでを見据えたKPIを設定し、費用対効果を厳密に把握する土台を作ります。
【自社ECの検索最適化と最新トレンドへの対応】を確認する項目として
| 106. 公式ECサイトの主要キーワード別検索順位を把握できているか 107. 公式ECサイトのSEO対策の基本ができているか 108. 公式ECサイトのAI検索対策の基本ができているか 109. 広告文・クリエイティブの継続的なA/Bテスト計画があるか 110. TikTokショップを中心に「発見系コマース」を行っているか |
106~110の項目は「自然流入の強化と新たな顧客接点の創出」です。
広告に頼り切らない体質を作るため、検索エンジンでの上位表示は基本中の基本です。さらに今後は、生成AIによる検索(AI検索対策)への対応や、TikTokショップなどの「発見系コマース」の活用が、新たな集客の主戦場となっています。これらの新しい波を捉えつつ、Web広告のクリエイティブをA/Bテスト等で磨き続ける運用力が求められます。
【モール集客と年間イベントの最大化】を確認する項目として
| 111. 各販売チャネル別の大規模な年間販売・イベントカレンダーを持っているか 112. モール別の重点集客キーワードの順位計測ができているか 113. モール内の検索対策の基本ができているか 114. モール広告の媒体別費用対効果を把握しているか 115. モールの大型セール・イベント対応の年間計画表を持っているか |
111〜115の項目は「プラットフォームの波に乗る戦術」です。
楽天市場やAmazonなどのECモールは独自の経済圏を持っています。認知・集客を増やすにはモール活用もひとつの手段です。
モール内の検索対策(モールSEO)やモール内広告の最適化は、自社ECとは異なる視点が必要です。また、モールの大型セールや季節のイベントは爆発的なアクセスを生むチャンスですが、事前の準備が勝敗を分けます。チャネル横断の年間カレンダーとモールのイベント計画を連動させ、山場に合わせて最大の仕掛けを行える体制を整えます。
以上が「認知・集客設計」のチェック項目の解説となります。
集客は「広告を出して終わり」のギャンブルではありません。データを正しく計測し、AI対応も含めて最新のトレンドも取り入れながら、自社独自の「勝てる方程式」を組み立てていく地道な運用の連続です。
このチェックリストを活用して、中長期的に資産となる「持続可能な集客基盤」を築き上げてください。
■筆者プロフィール
株式会社 久(きゅう)
ブランドEC成長支援室 室長 兼 EC経営コンサルタント
立川 哲夫(たつかわ てつお)

ECマーケティング×企業経営に精通したスペシャリスト
リテール業界に10年従事後、15年以上にわたるECビジネス推進およびECマーケティング支援経験を持つコンサルタント。多様な業界・企業規模における経営課題を整理し、ビジネスモデルの構築、戦略立案、実行支援に携わる。特に、EC・O2O・デジタルマーケティング領域での専門性が高く、EC事業を起点にして企業のビジネス拡大を実現。
大手EC総合支援企業において、10年以上にわたり経営幹部として新規事業開発や事業拡大に従事し、企業のブランディングやマーケティング統括を担当。執行役員として東証グロース市場への上場も経験。その後、外資系コンサルティングファームにてECビジネスの変革支援にも関わり、企業変革期における業務推進や社内体制整備、人材育成にも関与し、総合的な経営支援スキルを磨く。5冊のECマーケティング関連書籍の執筆・編集に関わり、EC事業戦略・売上アップの法則を凝縮し、知見の普及にも貢献。 その他、日経主催の講演会・ECセミナー講師、日経クロストレンド・月刊ネット販売・日本ネット経済新聞などへの寄稿実績も多数。