「EC戦略フレームワーク10選」⑨リソース配分の優先度 確認シート

ブランドEC フレームワーク

リテール業界に10年従事し、その後15年にわたり多くの企業においてEコマース参入・成長に関する戦略立案と施策実行を支援してきた筆者(株式会社 久 ブランドEC成長支援室 室長 立川哲夫)が、約20年の高成長期を経てEC業界およびECサイトを運営する企業が、初めて経験する成熟期に入ったと言えるこのタイミングで、ブランド公式EC(自社公式オンラインショップ)の成長戦略を再定義に役立つ「EC成長戦略フレームワーク」を提示・解説していきます。


【2026年度版】⑨リソース配分の優先度 確認シート

ブランドECの成長を加速させるためには、限られた資産・リソースを「選択と集中」させることが重要です。特に急成長を狙う段階では、強みとなる商品カテゴリーやアイテムを意図的にコントロールしていく必要があります。
まず、商品カテゴリーやアイテムを中心に効率的な施策を打つために、「パレートの法則(パレート分析)」を活用します。
これは「ABC分析」とも呼ばれ、物事の多くは上位20%の要素が全体の80%を占めるという考え方に基づきます。このデータ分析を踏まえて、マーケティング・在庫管理・各種マネジメントを進めていきます。
ECサイトにおいては、売上高と売上数量の2つの切り口で多い順に並べ、全体の80%を占めるカテゴリーやアイテムを特定し、重点的に管理していきます。


【パレートの法則(パレート分析)図

ただし、EC販売においてはこのパレートの法則が当てはまらないケースもあります。売上への貢献度が低い残りの80%を大切にしながら在庫を保有することで、顧客の利便性が高まり、差別化要素となる「ロングテール戦略」を採用することもあります。

このパレート分析(ABC分析)を行いながら、「PPM:プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント(Product Portfolio Management)」のフレームワークを活用することで、ブランドEC成長のための優先度判断に役立てていきます。

ECサイトの場合は、「販売の伸び率」と「利益貢献度(利益率)」の2軸で分類しながら可視化していきます。一般的に販売伸び率は前年比を基準に100%を境目として分布させ、利益率は会社全体の平均粗利益率を基準に分布させます。

【プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント(PPM) フレームワーク】



①「花形」ゾーンに入ったカテゴリーやアイテムは、現時点では売上高のボリュームが小さくても、ブランドECとして注目度が高い商品である可能性が高いです。このアイテムを起点に新規顧客開拓を目的とした販促投資やキャンペーンを行い、売上ボリューム拡大を目指します。その活動によって、②の「金のなる木」商品へと育てていきます。

②「金のなる木」ゾーンに入ったカテゴリーやアイテムは、ブランドECの中心となる商材に位置付けられます。そのため、在庫を十分に確保しつつ、リピート購入につなげる取り組みを進めます。また、このアイテムを中心にギフトや期間限定コラボレーションなどを企画し、ファンを増やすことで次の成長につながる原資を確保していきます。

③「問題児」ゾーンに入ったカテゴリーやアイテムは、類似商品や競合商品からシェアを獲得するための販促施策を実施し、シェア拡大が見込める段階で、この商品を中心に利益が確保できる関連商品を提案することで購入単価を高め、②の「花形」ゾーンへと引き上げていきます。
ECモールなどでは、利益率が低くても売上高やブランド認知・ブランド接点に貢献しているケースもあるため、意図的に利益を抑えてもブランドとしての価値を維持するという選択肢もあります。

④「負け犬」ゾーンに入ったカテゴリーやアイテムは、在庫削減やアイテム削除の対象となります。ただし、ECサイトでは集客力につながる「アウトレット」や「訳あり」特集などに活用し、新規顧客との接点づくりに役立てることもできます。また、リアル店舗と異なり、このゾーンに入っていてもECサイト独自の「ロングテール戦略」として残しておく価値があると判断した場合は、負担にならない範囲で維持する選択も有効です。


ここまで説明してきた「パレート分析」と「PPMフレームワーク」は、ブランド公式ECサイトの成長を加速させるうえで、日常的に活用したいフレームワークです。

特に、ブランドECの成長を加速させたいタイミングでは、限られたリソースを効率的に配分する「選択と集中」が不可欠となります。まず定例のデータ分析により「パレート分析(ABC分析)」を活用し、売上高や販売数量の上位20%が全体の80%を生み出す構造を把握します。重点カテゴリー・アイテムをダッシュボードなどで見える化させます。併せて、「PPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)」フレームワークを用いて、商品を「花形」「金のなる木」「問題児」「負け犬」に分類し、販売伸び率と利益率の観点から戦略的に投資・撤退を判断します。

ECでは「ロングテール戦略」も視野に入れ、利益貢献度の低い商品もブランド接点として活用する視点も持っておきます。これらの分析&投資判断を定例的に見直し、共通認識のもとで投資配分を決定することが、ブランドECの持続的な成長につなげていきます。

■筆者プロフィール
株式会社 久(きゅう)
ブランドEC成長支援室 室長 兼 EC経営コンサルタント
立川 哲夫(たつかわ てつお)

ECマーケティング×企業経営に精通したスペシャリスト
リテール業界に10年従事後、15年以上にわたるECビジネス推進およびECマーケティング支援経験を持つコンサルタント。多様な業界・企業規模における経営課題を整理し、ビジネスモデルの構築、戦略立案、実行支援に携わる。特に、EC・O2O・デジタルマーケティング領域での専門性が高く、EC事業を起点にして企業のビジネス拡大を実現。

大手EC総合支援企業において、10年以上にわたり経営幹部として新規事業開発や事業拡大に従事し、企業のブランディングやマーケティング統括を担当。執行役員として東証グロース市場への上場も経験。その後、外資系コンサルティングファームにてECビジネスの変革支援にも関わり、企業変革期における業務推進や社内体制整備、人材育成にも関与し、総合的な経営支援スキルを磨く。5冊のECマーケティング関連書籍の執筆・編集に関わり、EC事業戦略・売上アップの法則を凝縮し、知見の普及にも貢献。 その他、日経主催の講演会・ECセミナー講師、日経クロストレンド・月刊ネット販売・日本ネット経済新聞などへの寄稿実績も多数。