【第4回】「ブランドスコア」で、ファン育成を見える化する

ブランドEC ブランドスコア

ここ数年のEC市場の急速な環境変化により、目先の売上を追うだけのECマーケティングは限界を迎えています。本コラムでは、ケラー教授が提唱した「CBBEモデル(顧客ベースのブランド・エクイティ)」をECの戦略・実践に落とし込み、顧客の心理に蓄積された資産を可視化する新指標「ブランドスコア」の概念と活用ポイント解説していきます。


ブランドスコア(ブランド資産)を牽引する2つの項目

前回までのコラムにて、ランド価値をECデータで測るCBBEモデルの土台となる下記3つの項目を解説しました。

【ブランドスコア(ブランド資産)の土台となる3つの項目】

  1. Business Health(事業健全性・持続性)
  2. Identity(認知・指名性)
  3. Meaning(体験・品質)


【ブランド・レゾナンス・ピラミッド(CBBEモデル)】

今回は、ブランドECサイトを中心に顧客と信頼関係を築き、ファン育成に繋がる残りの2つの評価項目の目標値・改善に向けたアクション例を提示しながら解説していきます。


【ブランドスコア(ブランド資産)を牽引する2つの項目】
4.Response(顧客評価・信頼)
5.Resonance(顧客共鳴・ロイヤルティ)


Response(顧客評価・信頼)の評価項目例

企業に対する社会的信頼や、顧客の不安を払拭できているかを、特定ページの閲覧や離脱率などの行動データから測定します。

■企業信頼確認(目標値:5%)
【意味】企業情報(About)や特定商取引法ページなどの閲覧率です。
「どんな会社が運営しているのか」を確認しようとする、顧客の信頼形成プロセスを示します。
【改善アクション例】 フッターやヘッダーへの「About Us」リンク設置、創業ストーリー・開発秘話やサステナビリティへの取り組みなど、企業背景を伝えるコンテンツの充実を行っていきます。

■送料抵抗感(目標値:20%以下推奨)
【意味】 送料負担を理由としたカゴ落ちによる機会損失を示します。数値は低いほど優れた状態です。
【改善アクション例】 送料無料ラインの最適化、「あと○○円で送料無料」の導線設計、送料に対する明確な説明を徹底します。


■会員登録率(目標値:70%)
【意味】 新規購入者のうち会員登録に至った割合です。単発購入で終わらず、ブランドとの関係構築に踏み出せているかを測ります。
【改善アクション例】 初回登録特典(クーポン・ポイント)の訴求や、ソーシャルログイン導入による登録ハードルを下げる対応をしていきます。


■レビュー閲覧率(目標値:10%)
【意味】 商品ページなどでレビューが閲覧された割合です。
第三者の評価が意思決定にどれだけ活用されているかを示します。
【改善アクション例】 レビュー投稿キャンペーンの実施、ページ上部へのレビュー表示、高評価レビューのピックアップ掲載を行っていきます。


■キャンペーン到達率(目標値:40%)
【意味】 SNS告知やメルマガから流入したユーザーが、商品詳細ページまで到達した割合です。情報発信への信頼度と期待値の整合性を測る指標です。
【改善アクション例】ランディングページの表示速度改善に加え、訴求内容と遷移先URLの一致(商品直リンク)を確認・改善していきます。

 

Resonance(顧客共鳴・ロイヤルティ)の評価項目例

これまで評価項目が土台となり顧客はブランドのファンとなり、 継続的かつ高いLTV(顧客生涯価値)をもたらします。単なるリピート購入にとどまらず、ブランドへの深い愛着やファン化の度合いを評価していきます。

 

■買い回り率(目標値:30%)
【意味】複数カテゴリを購入している顧客の割合です。ブランド全体への支持度を示します。
【改善アクション例】 セット提案やコーディネート訴求を強化していきます。


■ロイヤル顧客率(目標値:20%)
【意味】 継続的に購入している優良顧客の割合です。
【改善アクション例】会員ランク制度やVIP施策により特別体験を提供を企画・実行していきます。


■ウィンドウショッピング率(目標値:105%)
【意味】購入を伴わない訪問頻度の成長率です。ブランド接触の習慣化を示します。
【改善アクション例】 新着情報やコンテンツ更新頻度とアナウンスを高めていきます。


■ギフト利用率(目標値:5%)
【意味】 贈答目的での購入割合です。ブランドに対する信頼の高さを示す象徴的指標です。
【改善アクション例】ギフト商品・ページの充実、 ギフト包装やeギフト機能の導入を進めていきます。


■パレート健全度(目標値:70%)
【意味】上位20%顧客による売上構成比です。収益構造の安定性を示します。
【改善アクション例】優良顧客への優遇と、一般顧客の育成施策を両立させていきます。

ここまで、ブランドECを中心に成長を実現するための「CBBEモデル」の活用と、「ブランドスコア」の評価設計、評価項目例・打ち手について解説してきました。

売上という結果指標だけではなく、Identity(認知)からResonance(共鳴)に至るまでの顧客心理をデータで可視化することで、自社の成長につながるボトルネックを明確に把握する必要があります。値引きや広告に依存した短期施策から少しずつ脱却し、顧客との関係性という「ブランド資産」を積み上げる経営へとシフトするために、「ブランドスコア」の視点や指標例を活用し、持続的に成長するEC経営の実現につなげていただければと思います。

 

■筆者プロフィール
株式会社 久(きゅう)
ブランドEC成長支援室 室長 兼 EC経営コンサルタント
立川 哲夫(たつかわ てつお)

ECマーケティング×企業経営に精通したスペシャリスト
リテール業界に10年従事後、15年以上にわたるECビジネス推進およびECマーケティング支援経験を持つコンサルタント。多様な業界・企業規模における経営課題を整理し、ビジネスモデルの構築、戦略立案、実行支援に携わる。特に、EC・O2O・デジタルマーケティング領域での専門性が高く、EC事業を起点にして企業のビジネス拡大を実現。

大手EC総合支援企業において、10年以上にわたり経営幹部として新規事業開発や事業拡大に従事し、企業のブランディングやマーケティング統括を担当。執行役員として東証グロース市場への上場も経験。その後、外資系コンサルティングファームにてECビジネスの変革支援にも関わり、企業変革期における業務推進や社内体制整備、人材育成にも関与し、総合的な経営支援スキルを磨く。5冊のECマーケティング関連書籍の執筆・編集に関わり、EC事業戦略・売上アップの法則を凝縮し、知見の普及にも貢献。 その他、日経主催の講演会・ECセミナー講師、日経クロストレンド・月刊ネット販売・日本ネット経済新聞などへの寄稿実績も多数。