【第6回】AI実装時代は「ブランド指名ワード」を磨く

ブランドスコア

いままでのコラムで提言してきましたが、ブランド公式ECをブランディング・顧客接点・ファン育成の中心へと再定義し、「売る場」から「ブランド資産を蓄積する場」へシフトする過程において、昨今は「AIにどのように選ばれるか」というAI検索(GEO)対策や、AIによる要約への対応も重要なテーマとなっています。
AIに選ばれるためのコンテンツ企画と実装がその手段として挙げられますが、進化を続けるAI側のアルゴリズムに影響されやすく、直近の対応方法としては不確定要素が含まれているのが現状です。

そのような状況下でもブランドECの成長は続けなければなりません。AI実装が進む数年後も変わらない本質的な要素のひとつが「ブランド指名ワードの設定と育成」となります。
ブランド公式ECの「ブランド指名ワード」を明確にし、それを成長戦略の中心に据えてマーケティング活動を展開していくことで、AI検索への対応はもちろん、SNSやデジタル接点、さらにはリアル店舗での販促や同梱冊子にいたるまで、あらゆるチャネルで機能する「検索キーワード」になります。
連載コラムにてご紹介しているEC評価指標である「ブランドスコア」においても、この「指名ワード検索数の推移」は重要度の高い項目となります。

AI実装時代に突入した今、改めてこのタイミングで、今後5年〜10年かけて育てるべき指名ワードを明確にする必要があります。その具体的なアプローチとして、長年ビジネスシーンで活用されてきた戦略フレームワーク「バリュープロポジション」を提示しますので活用ください。


バリュープロポジション設定フレームワークの活用

ブランド公式ECを起点に、企業のブランディングとファンを増やしていく施策の中心となる要素が、マーケティング戦略視点で言うと「第1想起を獲得する」です。つまり「〇〇〇〇と言えば、ブランド公式ECサイト」という「〇〇〇〇」の核となる部分を決めて、社内関係者・EC運営関係者の共通認識を持っていく必要があります。

それを決めていくアプローチとして「バリュープロポジション」設定フレームワークを活用します。「バリュープロポジション(Value Proposition)」は、よく使われるビジネスフレームワーク一つであり、顧客に対して自社の商品やサービスがどんな価値を提供するのかを明確に示す約束や提案のことで、「なぜ顧客はブランド公式ECサイトの商品やサービスを選ぶべきなのか」(選ばれる理由)を端的に表す要素です。

ブランド公式EC成長の最重要となる「ブランド指名ワード」と連動していきますので、次のフレームワーク活用しながら、公式ECサイトの「バリュープロポジション」を明確にしていただきたいです。

【バリュープロポジション設定フレームワーク】

手順として
①自社の公式ECで提供できる価値のうち、特徴的で差別化要素となる商品、価格、ブランドイメージ、実績、サービス、特典などを3つ程度ピックアップします。

②競合または類似するECサイトを選び、そのサイトが前面に打ち出している商品・価格・サービス・特典などを3つ程度抽出します。

③自社の公式ECサイトが想定しているメイン顧客が、求めている商品価値・価格・サービス・特典などを3つ程抽出します。

①②③の内容を踏まえて、自社の公式EC提供でき、競合他社サイトが提供できなく、顧客が求める提供価値を明確にします。


ブランド指名ワードを中心にAIが好むコンテンツを増やす

ここで決まった「バリュープロポジション」が、選ばれる理由となり、「〇〇〇〇と言えば」の「第一想起ワード」や検索で入力する「指名ワード」となります。また、サイト・商品ページ・SNS・WEB広告・メール・パッケージなどさまざまな場所や場面でのキャッチコピーとしても活用していきます。
このワードは自社独自のキーワードとなり、学習好きなAIエンジンが好むと言われている「コンテクスト(Context)」=ブランド・会社・商品に関わる「背景」「状況」「歴史」「開発ストーリー」などをキーワードと連動させたコンテンツを増やしていくことも行います。

この指名ワードが決まることで、EC事業のマーケティング戦略(広告、SNS、AI検索対策、サイトのページ、CRM)が効果的な施策が打てることになります。

AI検索(GEO)やAI要約への対応が重要度が増す中で、マーケティング手法は今後も変化し続けます。しかし、ブランドの育成を支える本質は不変と考えています。そのひとつがブランドEC成長の中心となる「ブランド指名ワード」の設定と育成となりますので、フレームワークを確認しながら指名ワードの再確認・設定ください。

 

■筆者プロフィール
株式会社 久(きゅう)
ブランドEC成長支援室 室長 兼 EC経営コンサルタント
立川 哲夫(たつかわ てつお)

ECマーケティング×企業経営に精通したスペシャリスト
リテール業界に10年従事後、15年以上にわたるECビジネス推進およびECマーケティング支援経験を持つコンサルタント。多様な業界・企業規模における経営課題を整理し、ビジネスモデルの構築、戦略立案、実行支援に携わる。特に、EC・O2O・デジタルマーケティング領域での専門性が高く、EC事業を起点にして企業のビジネス拡大を実現。

大手EC総合支援企業において、10年以上にわたり経営幹部として新規事業開発や事業拡大に従事し、企業のブランディングやマーケティング統括を担当。執行役員として東証グロース市場への上場も経験。その後、外資系コンサルティングファームにてECビジネスの変革支援にも関わり、企業変革期における業務推進や社内体制整備、人材育成にも関与し、総合的な経営支援スキルを磨く。5冊のECマーケティング関連書籍の執筆・編集に関わり、EC事業戦略・売上アップの法則を凝縮し、知見の普及にも貢献。 その他、日経主催の講演会・ECセミナー講師、日経クロストレンド・月刊ネット販売・日本ネット経済新聞などへの寄稿実績も多数。