属人的な営業から仕組み化された営業へ|受発注DXが営業を変える

受発注DX BtoB EC

「あの取引先のことは、担当者しか分からない」——BtoBの営業ではよく聞く言葉かもしれません。長年の関係を築いたベテランが、取引先の事情を把握し、注文を電話で受け、社内の調整までこなす。頼もしい反面、その人が異動や退職をすると、取引そのものが揺らぐ。

受発注DXはコスト削減の施策として語られがちですが、実はこのような“営業の属人化”を解く一手でもあります。本稿では、受発注のデジタル化が営業の仕事をどう変えるのかを整理します。

BtoBの営業は、なぜ属人的になるのか

BtoBの営業が属人的になるのは、担当者の資質の問題ではありません。構造的な理由があります。取引先ごとに価格や掛け率が違い、納品の条件も個別。「この取引先はこの単位でしか受けない」「あの担当者は電話でしか発注しない」といった情報が、担当者の頭の中に溜まっていきます。

しかし仕組みとして共有される場所がないため、経験を積むほど属人化が進む——これがBtoB営業の宿命的な構図です。

「御用聞き」に時間を奪われる構造

属人化がもたらす最大の損失は、時間の使い方です。電話で注文を受け、内容を復唱し、社内システムに入力し、納期を確認して折り返す。この一連の“受注処理”は、本来なら営業でなくてもできる作業です。

しかし取引先が電話やFAXで発注する限り、営業がその窓口になり続けます。結果として、提案や新規開拓に使えるはずの時間が、日々の注文処理で埋まっていきます。「営業が忙しいのに売上が伸びない」という状態の裏では、この構造が原因になっていることがあります。

受発注DXで、営業の仕事はこう変わる

受発注をデジタル化すると、この構造が変わります。定型的な注文は取引先が自分でWebから発注できるようになり、営業が電話で受ける必要がなくなります。取引先にとっても、担当者の勤務時間を気にせず24時間発注できるほうが便利です。では空いた時間で営業は何をするのか——ここが本題です。在庫や納期の問い合わせ対応ではなく、「最近この商材の動きが鈍いようですが、こういう提案はどうですか」という、本来の営業活動に時間を使えるようになります。

大切なのは、これが“人員削減”の話ではないという点です。人手不足のいま、限られた人材をどの仕事に充てるかという配置の話です。

受注処理を仕組みに任せ、人にしかできない提案や関係構築に人を回す。それが受発注DXの本質的な価値です。

仕組み化で生まれる“もう一つの資産”

もう一つ見落とされがちな効果があります。受発注がデジタル化されると、「誰が・いつ・何を・どれだけ」発注したかがデータとして自動的に蓄積されることです。これまで担当者の記憶や手帳にあった情報が、会社の資産として残ります。

たとえば、発注が途絶えた取引先を早めに検知して声をかける。購買履歴から関連商材を提案する。こうした動きが、経験や勘ではなくデータをもとにできるようになります。ベテランが感覚でつかんでいた“潮目”を、組織の誰もが見られる状態にする——これが仕組み化の到達点です。

担当者が代わっても取引が揺らがない体制は、こうして作られます。

仕組み化を根づかせるために

ただし、仕組みを入れれば自動的に営業が変わるわけではありません。長年電話で受けてきた営業ほど、「取引先との接点が減るのでは」と不安を抱きます。

ここで大切なのは、Web発注は関係を薄くするものではなく、雑務を減らして対話の質を上げるものだと共有することです。

実際に効くのは、「これまで注文の電話でやり取りしていた時間を、御社の課題解決や新商品の提案にあてさせてください」と、営業自身が取引先に伝えることです。営業が移行の旗振り役になれば、取引先の利用も進みます。そして導入初期は、売上ではなく“取引先ごとの初回ログイン率”や“Web発注比率”を見て、つまずいている先を一つずつフォローする。この地道な伴走を弊社がいちばん重視しているのも、仕組みは使われて初めて成果になるからです。

受発注DXは、単なる効率化ではありません。属人的な営業を仕組みに変え、人にしかできない仕事に人を戻す取り組みです。

まずは、自社の営業が1日のうちどれだけの時間を受注処理に使っているかを確かめてみてください。そこに、次の一手のヒントがあります。

  • 受発注DXに関する無料相談はこちら
  • 受発注DXを実現するECデータマネジメントクラウド「ECコネクター®」についてはこちら

〈筆者プロフィール〉
ECコンサルタント K.H

大阪大学を卒業後、新卒でゲーム会社にプランナーとして入社。2023年に株式会社久へジョインし、データアナリストとしてキャリアをスタート。現在はECコンサルタントとして、データドリブンなアプローチを武器に、クライアントの自社公式ECサイトを中心に分析から改善・効果検証まで一貫して支援。2026年より「ブランドEC成長支援室」を兼務し、伴走型コンサルタントとして日々の試行錯誤を重ねながら奮闘中。
プライベートでは茶道表千家講師の顔を持つ一方、アマチュアキックボクシングで心身を鍛える一面も。