古い基幹システムと最新ECをつなぐには?システムを入れ替えずに自動化する現実的なアプローチ

ECデータ 基幹システム連携

EC市場の拡大に伴い、最新のカートシステムやマーケティングツールを導入する企業が増えています。一方で、受注が増えれば増えるほど、現場の業務負担が大きくなっているケースは少なくありません。

その主な原因の一つが、社内で長年利用している販売管理や在庫管理などの基幹システムが古く、最新のECプラットフォームとデータを自動で連携できないという問題です。

本記事では、システムを丸ごと入れ替えることなく、古いシステムと最新のECサイトをつなぎ、手作業によるデータ転記を自動化するための現実的なアプローチを解説します。

多くの企業が直面するシステム連携の壁と手作業のリスク

最新のシステム同士であれば、APIと呼ばれる通信機能を使って受注や在庫のデータを自動的に同期できます。しかし、長年稼働している古いシステムには、このAPIが備わっていないことがほとんどです。

だからといって、基幹システム全体を最新のものに入れ替えるには数千万円規模のコストと年単位の開発期間がかかるため、簡単には決断できません。

結果として、多くの現場では以下のような手作業が毎日発生しています。

  • 2つの画面を並べて、目視で確認しながら手動で入力する
  • CSVデータをダウンロードし、表計算ソフトで加工してからアップロードする

これらの手作業は、入力に時間がかかるだけでなく、大きな運用リスクを伴います。手作業によるミスは、顧客の信頼を損ない、中長期的な売上に悪影響を及ぼす直接的な要因となり得るのです。

システムを改修せずに連携を実現するRPAの仕組み

膨大なコストをかけずにこの課題を解決する現実的な手段が、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の活用です。

APIがシステム同士の裏側の通信経路を使ってデータをやり取りするのに対し、RPAは人間が普段見ている操作画面をプログラムによって自動的に操作します。

具体的には、以下のような手順で人間の作業を代行します。

  • 自動ログイン:指定したシステムを立ち上げ、IDとパスワードを入力してログインします。
  • 操作位置の特定:画面の裏側にある設計図(ソースコード)の目印を読み取り、入力フォームやクリックすべきボタンの位置を正確に見つけ出します。
  • データの転記:最新のECシステムから取得した受注データを、古いシステムの所定の欄へ順番にコピー&ペーストしていきます。反対に、古いシステムにある在庫数をECサイト側に反映させることも可能です。

このように、RPAを活用すれば、既存のシステムに手を加えることなくデータの自動転記が実現します。

RPA連携で知っておくべき注意点と対策

既存システムを活かせるRPAは非常に便利ですが、技術的な特性上の注意点もあります。

それは、連携先システムの画面デザインやレイアウトが変更されると、一時的に処理が止まってしまう可能性があるという点です。RPAは画面上の特定の目印を頼りに動いているため、ボタンの配置や入力順序が変わると、操作すべき場所を見失って安全のために稼働を停止します。

したがって、導入後は完全に放置するのではなく、処理が止まった際にすぐに気づけるエラー検知の仕組みや、画面変更に合わせた定期的なメンテナンス体制を整えておくことが重要です。

自社に合った連携方法を選ぶための3つの評価軸

システム連携には、API、CSV連携、RPA、システム刷新など複数の選択肢があります。自社にとってRPAが最適な選択肢かどうかは、以下の3つの基準で評価できます。

  • 予算と期間の制約:数千万円の費用や長期の開発期間を確保することができるか。
  • 既存システムの継続利用:長年業務に組み込まれている現在の基幹システムを、今後も使い続けたいか。
  • 費用対効果:RPAは初期費用を低く抑えて導入できるケースが多く、手作業のミス排除と時間削減のメリットがコストを上回るか。

既存の資産をそのまま活かしながら、日々の定型業務からミスをなくしたい企業にとって、RPAは極めて合理的な選択肢と言えます。

データ連携の先にあるデータドリブンな経営環境

RPAによる自動化の目的は、単なる作業時間の削減だけではありません。古いシステム内に眠っていたデータを自動で取り出せるようになることで、最新のデータ分析に活用する道が開けます。

例えば、最新のECプラットフォームとはAPIでリアルタイムに通信し、APIのない古いシステムにはRPAを活用するというハイブリッド型の連携環境を構築できます。

こうして集約したデータを一つのダッシュボード(Web解析データ、受注データ、在庫データなどを統合した画面)に反映させることで、日々の売上状況や在庫計画を正確に可視化できます。手作業によるデータ加工をなくして初めて、事実に基づいた迅速な経営判断が可能になります。

まとめ:手作業をなくし、本来のコア業務に集中する

古いシステムとのデータ連携は、大規模な開発を行わなければ不可能と思われがちです。しかし、RPAなどの技術を組み合わせれば、既存のシステムを活かしたまま手作業をなくしていくことは十分に可能です。

手入力やデータ加工にかけていた時間を削減できれば、その分のリソースをデータ分析や売上拡大のための施策立案など、人間が本来注力すべきコア業務に回すことができます。

まずは、日々の業務の中でどのデータ処理を手作業で行っているかを整理することから始めてみてください。自社に合った最適な連携手法や、データ統合からダッシュボード構築までの道筋に迷った際は、連携ノウハウを持つ専門企業へ相談し、具体的な解決イメージを掴むことをおすすめします。

〈筆者プロフィール〉
データサイエンティスト RIN

前職では、出版業界にてECモールの運営や在庫管理などの実務を担当。現在は株式会社久にて、データサイエンティストとして購買データや会員データの加工、分析、モデル構築などに携わる。 本コラムでは、EC現場での実体験とデータサイエンスの知見を掛け合わせ、データ連携や前処理の時短テクニック、AIを活用した業務効率化のノウハウをわかりやすく解説します。