そのデータ連携、BtoBの商習慣に耐えますか?在庫引当・商品コードの壁

基幹システム連携 受発注DX

コラム「Bカート・Shopifyを入れても失敗?基幹連携を無視したBtoB EC」にて、BtoB ECの成否はカート選びではなく連携設計で決まるとお伝えしました。ではその連携、どう選べばよいのか。ベンダーに聞けば、たいてい「うちのツールで基幹とつながります」と返ってきます。

しかし、この「つながります」という言葉ほど、受け取り方に幅のあるものはありません。本稿では、BtoBで必ずぶつかる2つの壁——在庫引当と商品コード——を通じて、連携方式の選び方を整理します。

「つながります」には2つの意味がある

連携ツールの説明で語られる「つながります」は、多くの場合「データを受け渡しできます」という意味です。CSVを出力し、別のシステムに取り込む。それ自体は多くのツールができます。

しかしBtoBの受発注で本当に必要なのは、データを“自社のルールに合わせて加工しながら”受け渡すことです。取引先ごとの価格を当てはめ、どの倉庫の在庫を引き当てるか判断し、商品コードを変換する。この加工ができるかどうかが、汎用の連携ツールとBtoB受発注に特化した連携の分かれ目になります。

なお本稿で「汎用の連携ツール」と呼ぶのは、業種やシステムを問わず広く使えるように作られたデータ連携サービス(iPaaSやEAIと呼ばれる製品群)のことです。多くのシステムを手軽につなげる一方、業界固有の細かなルールまでは想定していないのが一般的です。

壁① 在庫引当:どこの在庫を、いつ押さえるのか

BtoCなら「在庫が1つ減る」で済みますが、BtoBはそう単純ではありません。自社倉庫が複数あり、メーカー直送もあり、取り寄せもある。同じ商品でも、取引先や数量によって「どこから出すか」が変わります。

さらに厄介なのがタイミングです。基幹システムの在庫更新が1日数回のバッチ処理であれば、Web上の在庫数は常に少し古い情報になります。ここを無視して「リアルタイム表示」を約束すると、在庫があると表示して実際は欠品、という事態を招きます。大切なのは完璧な同期を目指すことではなく、自社の在庫の動き方に合わせて“どこまでを見せるか”を設計することです。

壁② 商品コード:同じ商品を、違う名前で呼んでいる

もう1つの壁が商品コードです。自社の型番、基幹システムの管理コード、取引先が使っている独自の品番——同じ商品が、場所によって違う名前で呼ばれているのはBtoBでは珍しくありません。長年の取引の中で、取引先ごとの呼び方が定着しているケースもあります。

これを人が読み替えているうちは問題が見えませんが、システム同士をつなぐ瞬間に表面化します。コードが一致しなければ、注文データは正しく流れません。連携の仕組み側で「この取引先のこの品番は、自社のこの型番」と変換できるかどうか。ここが、汎用ツールで詰まりやすい典型的なポイントです。

汎用の連携ツールとBtoB特化型、選び方の分かれ目

誤解のないように言えば、汎用の連携ツールが劣っているわけではありません。取引の形がシンプルで、価格も一律、商品コードも統一されているなら、汎用の連携ツールで十分に回ります。コストも抑えられます。

分かれ目は、自社の商習慣の複雑さです。取引先ごとの価格が何種類もある、倉庫が複数ある、取引先独自の品番が使われている——こうした条件が重なるほど、加工を前提とした連携でなければ、結局は人が間を埋めることになります。安く導入したはずが、手作業が残り、数年後に作り直す。これが最も避けたい結末です。

観点汎用の連携ツール(iPaaS/EAI)BtoB受発注に特化した連携
得意なこと決まった形式のデータ受け渡し自社ルールに合わせたデータ加工
取引先別の価格対応しにくい出し分けを前提に設計
在庫引当単純な在庫連動複数拠点・直送・取り寄せを考慮
商品コード一致していることが前提取引先別コードの変換に対応
向くケース要件がシンプル/小さく始めたい商習慣が複雑/将来の拡張を見据える

選ぶ時に確認すべき、たった1つの問い

技術の詳細を決裁者が理解する必要はありません。もし現場から提案を受けたとき、次の一問を投げてみてください。

「うちの“例外”は、その仕組みで吸収できますか」——取引先別の価格、複数拠点の在庫、取引先ごとの品番。自社にある例外を具体的に挙げて確認する。ここで具体的な処理方法が返ってくるかどうかで、その連携が自社に耐えるかがおおよそ判断できます。

弊社の支援でも、API連携に対応していない基幹を抱えた現場でデータを変換しながらつなぐ設計を重ねてきました。大切なのは、つながるかどうかではなく、自社の商習慣ごとつながるかどうかです。

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〈筆者プロフィール〉
ECコンサルタント K.H

大阪大学を卒業後、新卒でゲーム会社にプランナーとして入社。2023年に株式会社久へジョインし、データアナリストとしてキャリアをスタート。現在はECコンサルタントとして、データドリブンなアプローチを武器に、クライアントの自社公式ECサイトを中心に分析から改善・効果検証まで一貫して支援。2026年より「ブランドEC成長支援室」を兼務し、伴走型コンサルタントとして日々の試行錯誤を重ねながら奮闘中。
プライベートでは茶道表千家講師の顔を持つ一方、アマチュアキックボクシングで心身を鍛える一面も。