BtoB ECサイトは「受注の窓口」で終わらせない|サイトに集まる需要を拾う設計

BtoB EC ECデータ

コラム「取引先の「発注シェア」をどう上げるか|BtoBの深耕戦略」では、既存取引先における発注シェアをどう上げるかをお伝えしました。今回は、そのための材料がどこにあるかという話です。

答えは、すでに手元にあります。BtoB ECサイトです。多くの会社はこれを「注文を受ける窓口」として使っていますが、実際にはもう一つの役割を持っています。取引先やその先の使い手が、何を求めているかを教えてくれる情報の入口です。

BtoB ECサイトは、注文以外の情報も運んでくる

Web発注の仕組みを入れると、注文データが残ります。これは他コラムにてお伝えしたとおり、営業や仕入れの判断材料になります。ただ、サイトに残るのは注文だけではありません。

何を検索して見つからなかったか。どの商品を見て、発注に至らなかったか。どんな問い合わせが届いたか。こうした“注文にならなかった動き”も、すべて記録として残ります。そしてここには、まだ売れていない需要が含まれています。注文データが「すでに売れたもの」を教えるのに対し、これらは「売れるかもしれないもの」を教えてくれます。

ところが、この情報を見ている会社は意外と多くないのではないでしょうか。サイトは受注処理のためのものだと考えられているからです。

サイトに集まる4つの「需要の手がかり」

具体的に、どこに何が現れるのかを整理します。

サイトに残るものそこから分かること打ち手
サイト内検索の履歴取引先が探したが、見つからなかったもの商品名や別称を追加する/未取扱なら仕入れを検討
閲覧されたが発注されない商品価格や情報が足りず迷われている商品説明・規格情報を足す/営業が個別に確認
エンドユーザーからの問い合わせ現場での用途・困りごと・呼び方取引先へつなぎ、用途情報として還元する
発注の周期と組み合わせ定番化している商品/併せ買いの傾向次の発注時期に合わせた案内・セット提案

とりわけ見落とされているのが、自社サイトに届くエンドユーザーからの問い合わせです。「この製品はどこで買えますか」「こういう用途に使えますか」——こうした声は、商流の先にいる使い手から直接届く貴重な情報です。ところが現場では、「弊社は直販しておりません」と定型的に返して終わっていないでしょうか。ここで用途や困りごとを一言聞き、記録しておくだけで、現場の情報が蓄積されていきます。

拾った声を、取引先への提案に変える

集めた情報は、そのままでは意味を持ちません。取引先への提案に変えることで、はじめて売上につながります。

たとえば、検索されているのに自社が扱っていない商品が見つかったとします。これは仕入れの検討材料になりますし、取引先に「こういう商品の需要があります」と伝えられる情報にもなります。エンドユーザーの用途が分かれば、「同じ業種の会社ではこう使われています」と、取引先の販売を助ける形で渡せます。

他コラムにてお伝えしたシェア拡大とも直結します。取引先が売りやすい情報を渡せる会社は、単なる仕入先ではなく相談相手になる。そうなれば、発注は自然と自社に寄っていきます。サイトに集まる声は、その関係をつくる材料です。

拾える設計になっているか——構築時に決まる

ここが本稿で最もお伝えしたい点です。こうした情報が拾えるかどうかは、実はサイトを作る段階でほぼ決まります。

サイト内検索の履歴が記録されているか。どの商品が見られて発注されなかったかが分かるか。問い合わせフォームに用途を書ける欄があるか。取引先が発注時に、任意で業種や用途を残せるようになっているか。こうした仕掛けは、後から足すこともできますが、最初に設計しておくほうが確実です。

逆に言えば、受注処理だけを目的に作られたサイトは、注文以外の情報を何も残しません。数年運用しても、手元に残るのは受注実績だけ。売上を伸ばす材料は、取りこぼされたまま消えていきます。

弊社がBtoB ECの構築からサイト内検索の分析、公開後の改善まで一貫して関わっているのは、この設計を最初に組み込むためでもあります。作ってから「あの情報が取れていない」と気づくケースは、BtoCEC含め現場で実際に見てきたことです。

まずは、自社のBtoB ECサイトで「検索履歴が見られるか」「問い合わせに用途を書ける欄があるか」を確認してみてください。見られない状態なら、そこが最初に整えるべき箇所です。

■受発注DXに関する無料相談はこちら
■受発注DXを実現するECデータマネジメントクラウド「ECコネクター®」についてはこちら

〈筆者プロフィール〉
ECコンサルタント K.H

大阪大学を卒業後、新卒でゲーム会社にプランナーとして入社。2023年に株式会社久へジョインし、データアナリストとしてキャリアをスタート。現在はECコンサルタントとして、データドリブンなアプローチを武器に、クライアントの自社公式ECサイトを中心に分析から改善・効果検証まで一貫して支援。2026年より「ブランドEC成長支援室」を兼務し、伴走型コンサルタントとして日々の試行錯誤を重ねながら奮闘中。
プライベートでは茶道表千家講師の顔を持つ一方、アマチュアキックボクシングで心身を鍛える一面も。