制作丸投げは失敗の元|戦略から定着まで伴走するBtoB EC導入支援の選び方

定着化 受発注DX

BtoB ECの導入を決めたあと、次に経営が向き合うのは「どこに頼むか」です。相見積もりを取り、機能と金額を比べ、一番良さそうな会社に任せる。ここで多くの企業がつまずきます。理由は、比較の軸が「作る力」に偏っているからです。

本シリーズで繰り返してきたように、受発注DXは作った時点では成果が出ません。今回は、支援会社をどう見極めるか、そして発注者側が何を持つべきかを整理します。

なぜ「丸投げ」は失敗するのか

「専門家に任せたほうが確実だろう」という判断は、一見合理的です。しかし受発注DXでは、丸投げが失敗の引き金になります。理由は単純で、外部の会社は自社の業務を知らないからです。

取引先ごとの価格ルール、注文書の備考欄に書かれる個別指示、「あの担当者は電話でしか発注しない」といった事情——これらは社内にしかない情報です。それを渡さずに設計を任せれば、実務と噛み合わないものができ上がります。丸投げとは、判断材料を渡さないまま判断を委ねることであり、外注先の能力とは別の問題です。

さらに厄介なのは、丸投げした案件は、うまくいかない理由を誰も説明できないという点です。現場は「使いにくい」と言い、外注先は「ご要望どおりに作りました」と言う。責任の所在が曖昧になり、改善も進みません。

支援会社は3タイプ。得意な領域が違う

BtoB EC導入支援会社を選ぶ前に、そもそもタイプが違うことを知っておく必要があります。どれが優れているという話ではなく、任せられる範囲が違います。

タイプ得意なこと注意が必要な点
制作・構築会社画面デザイン、サイト構築業務設計や基幹連携、導入後の定着は範囲外のことが多い
システムベンダー自社製品の導入・カスタマイズ製品ありきの提案になりやすく、他の選択肢と比べにくい
総合支援・伴走型業務設計から構築、定着まで支援範囲が広いぶん費用の内訳が見えにくく、確認が必要

自社に業務設計やプロジェクト推進のできる人材がいるなら、構築だけを外に出す判断もあります。逆にそこが手薄なら、業務の整理から入ってくれる相手を選ぶ必要があります。自社に足りないものを埋める、という発想で選ぶのが基本です。

提案書で見極める、4つの質問

提案を受けたとき、次の4つを投げてみてください。回答の具体性で、その会社がどこまで見ているかが分かります。

①「うちの受発注業務の、どこを最初にデジタル化すべきだと思いますか」
業務を聞かずに機能提案から入る相手は、実務を見ていません。

②「うちの商習慣は、その仕組みで吸収できますか」
取引先別価格、複数拠点の在庫、独自品番。具体的な処理方法が返ってくるかを見ます。

③「基幹システムとの連携は、どの方式で、どこまでを想定していますか」
ここが曖昧なまま進むと、受注の入口だけがデジタルになります。

④「導入後、取引先に使ってもらうために何をしてもらえますか」
最も差が出る質問です。説明会、マニュアル、未利用先のフォロー。ここに具体策がない会社は、納品までが仕事の範囲です。

発注者側が持たなければならない責任

ここまで見極めの話をしてきましたが、良い支援会社を選んだだけでは足りません。発注者側が手放してはいけないものがあります。

1つ目は、業務の情報です。暗黙のルールや例外処理を、面倒でも言語化して渡す。

2つ目は、決める役割です。「何を載せて、何を載せないか」「どこまで投資するか」は、外注先が代わりに決められません。

3つ目は、取引先との関係です。移行をお願いするのは自社の営業であり、外部の会社ではありません。

支援会社に任せられるのは、進め方の設計と実行の支援まで。自社の業務を語ることと、意思決定することは、最後まで発注者の仕事です。

「作れる会社」ではなく「使われるまで見る会社」を選ぶ

受発注DXは、納品された瞬間には何の成果も生んでいません。取引先が使い、社内の手作業が減って、はじめて投資が回収されます。だとすれば、選ぶべきは作れる会社ではなく、使われる状態まで一緒に見てくれる会社です。

弊社が業務のヒアリングから構築、そして取引先への説明会や未利用先のフォローまで関わっているのも、この考えに立っているからです。もっとも、これは久を選ぶべきという話ではありません。どの会社に頼むにせよ、「納品後、使われるまでをどう支えるか」を必ず確認してください。その一点を問うだけで、比較の質は大きく変わります。

まずは手元の提案書を、この視点で読み返してみてください。書かれているのが機能と金額だけなら、確認すべきことがまだ残っています。

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〈筆者プロフィール〉
ECコンサルタント K.H

大阪大学を卒業後、新卒でゲーム会社にプランナーとして入社。2023年に株式会社久へジョインし、データアナリストとしてキャリアをスタート。現在はECコンサルタントとして、データドリブンなアプローチを武器に、クライアントの自社公式ECサイトを中心に分析から改善・効果検証まで一貫して支援。2026年より「ブランドEC成長支援室」を兼務し、伴走型コンサルタントとして日々の試行錯誤を重ねながら奮闘中。
プライベートでは茶道表千家講師の顔を持つ一方、アマチュアキックボクシングで心身を鍛える一面も。