本カテゴリでは、FAX受注の限界から始まり、失敗のパターン、システム連携、取引先への定着、そしてデータを使った売上拡大までを扱ってきました。個別のテーマを順に取り上げてきましたが、通して読むと一本の道筋になります。
今回はその全体像を4つの段階として整理します。自社が今どこにいて、次に何をすべきかを確かめるための保存版としてお使いください。
なぜ全体像が必要なのか
受発注DXがうまくいかない会社を見ていると、多くは「順番」でつまずいています。まだ業務を整理していないのにカートを選び始める。作ったのに取引先へ移行を促す計画がない。データが溜まっているのに営業が使っていない。
いずれも個々の判断が間違っているというより、いま自社がどの段階にいて、次に何をすべきかが見えていないことから生まれます。全体像を持っていれば、目の前の一手が全体のどこに位置するかが分かり、飛ばしてはいけない工程も見えてきます。

第1段階 現状を数字にする(気づく)
最初の段階でやるべきは、現状を数字にすることです。1日の注文件数、1件の処理にかかる時間、手入力によるミスの発生状況、そして受注処理に費やしている人員と時間。
ここが感覚のままだと、投資の判断も効果の検証もできません。逆にこの数字が出れば、稟議も通りやすくなります。あわせて、同業がどこまでデジタル化しているかという外の状況も押さえておきたい段階です。
この段階で読みたい記事
第2段階 設計して、つくる(つなぐ)
次が設計と構築です。ここで最も多い失敗は、業務の整理を飛ばしてシステム選定から始めることです。どの注文をデジタル化し、どれを人が受けるのか。取引先ごとの価格や在庫の情報はどこにあるのか。これを決めてからでなければ、ツールは選べません。
また、この段階の成否を分けるのが基幹システムとの連携設計です。発注画面だけをつくっても、その先が手作業のままでは工数は減りません。カートの機能比較より、データがどうつながるかを先に描く必要があります。
この段階で読みたい記事
- 「なぜ受発注DXは失敗するのか?共通する5つのパターン」
- 「Bカート・Shopifyを入れても失敗?基幹連携を無視したBtoB EC」
- 「そのデータ連携、BtoBの商習慣に耐えますか?在庫引当・商品コードの壁」
第3段階 使われる状態にする(定着)
システムが完成しても、この時点では投資は回収されていません。取引先が使い始めて、はじめて成果が出ます。多くの会社がここで力尽きますが、実際には公開後こそ動きを増やす必要があります。
取引先には移行しない理由があります。慣れ、失敗への不安、社内の事情。それぞれ打ち手が違うため、一律の案内では動きません。また、社内では営業の役割が変わる段階でもあります。
この段階で読みたい記事
- 「属人的な営業から仕組み化された営業へ|受発注DXが営業を変える」
- 「『使ってくれない』を防ぐ|取引先の利用率を上げるオンボーディング」
- 「長年FAXの取引先をどう動かす?移行を止める心理的ハードルの外し方」
- 「制作丸投げは失敗の元|戦略から定着まで伴走するBtoB EC導入支援の選び方」
- 「BtoB EC、公開1年後に差がつくもの|データで見つけて直す改善の回し方」
第4段階 売上拡大に転じる(攻める)
受発注が回り始めると、次の段階に進めます。ここからが本題だと言ってもよいでしょう。効率化のために集めたデータが、売上を伸ばす材料に変わります。
見るべきは合計売上ではなく、取引先ごとの発注の動きです。発注が減った取引先、買われていない商品、欠品による売り逃し。さらに、取引先の仕入れ全体のうち自社が何割を占めているかという発注シェアの視点を持てば、新規開拓より確度の高い伸びしろが見えてきます。
この段階で読みたい記事
- 「売上の可視化だけでは不十分|受注データで既存取引先の売上を伸ばす3つの攻め手」
- 「受注データが営業部門で止まっている|部門をまたいで需要情報を流す仕組み」
- 「取引先の『発注シェア』をどう上げるか|BtoBの深耕戦略」
- 「BtoB ECサイトは『受注の窓口』で終わらせない|サイトに集まる需要を拾う設計」
自社はどの段階か——チェックリスト
最後に、自社の段階を確かめるための問いを並べます。答えられない項目があれば、そこが次に取り組むべき箇所です。
| 段階 | 確かめる問い |
|---|---|
| 第1段階 | 受注処理に1日どれくらいの時間をかけているか、数字で言えるか |
| 第2段階 | どの注文をデジタル化し、どれを人が受けるかが決まっているか |
| 第2段階 | 基幹システムとどうつなぐか(方式と範囲)が描けているか |
| 第3段階 | 取引先ごとの初回ログイン率・Web発注比率を把握しているか |
| 第3段階 | 公開後の改善に、担当と時間と予算が割かれているか |
| 第4段階 | 発注が減った取引先を、月次で把握できているか |
| 第4段階 | 主要取引先における自社の発注シェアを、見立てられているか |
この4段階を通して申し上げたいのは、受発注DXは効率化で終わる取り組みではないということです。守りとして始めた投資が、取引先との関係を強くし、売上を伸ばす土台になる。そこまで含めて設計できるかどうかが、数年後の差になります。
そして、どの段階にも共通するのは「小さく始めて、確実に使われる状態をつくる」ことです。完璧な計画より、動いている一歩のほうが価値があります。このコラムが、その一歩を決める材料になれば幸いです。
■受発注DXに関する無料相談はこちら
■受発注DXを実現するECデータマネジメントクラウド「ECコネクター®」についてはこちら
〈筆者プロフィール〉
ECコンサルタント K.H
大阪大学を卒業後、新卒でゲーム会社にプランナーとして入社。2023年に株式会社久へジョインし、データアナリストとしてキャリアをスタート。現在はECコンサルタントとして、データドリブンなアプローチを武器に、クライアントの自社公式ECサイトを中心に分析から改善・効果検証まで一貫して支援。2026年より「ブランドEC成長支援室」を兼務し、伴走型コンサルタントとして日々の試行錯誤を重ねながら奮闘中。
プライベートでは茶道表千家講師の顔を持つ一方、アマチュアキックボクシングで心身を鍛える一面も。