コラム「BtoBの発注画面は、なぜ使いにくいままなのか」では、BtoCで磨かれた「使いやすさ」をBtoBに持ち込む話をお伝えしました。今回はもう一つ、BtoCから持ち込みたい発想があります。顧客を段階で捉え、段階ごとに手を打つという考え方です。
BtoCでは当たり前のことですが、BtoBの取引先に対しては意外と適用されていなかったりします。
BtoBの取引先は「管理」されているが、「育てられて」いない
BtoBの会社は、取引先の情報を細かく持っています。会社名、担当者、与信、掛け率、支払条件、過去の取引額。基幹システムには膨大なデータが入っています。
しかしその使い方を見ると、記録と請求のための管理にとどまっていないでしょうか。「A社は月に何回発注してくれるか」「B社は取引を始めて半年だが、まだ一部の商品しか買っていない」——こうした状態の違いを踏まえて手を打つ、という発想は薄い。すべての取引先が同じように扱われています。
これは怠慢ではなく、BtoBの構造上そうなりやすいためです。BtoCに比べて顧客数が少ない傾向にあり、担当営業が個別に把握しやすい。だから「仕組みで段階を分ける」必要を感じないのです。
BtoCが当然にやっていること
一方、BtoCのECでは顧客を段階で分けるのが基本です。初回購入した人、2回目に進んだ人、定期的に買う人、しばらく買っていない人。それぞれに別の施策を打ちます。
初回の人には次の購入を促し、離れかけた人には呼び戻す。優良な顧客には特別な案内をする。なぜそうするかというと、段階によって必要な働きかけが違うからです。全員に同じメールを送っても、効果は限られます。
この考え方は、BtoBでも同じように成り立ちます。むしろBtoBでは一社あたりの取引額が大きいため、一段階上がったときの効果が桁違いに大きい。BtoCで100人を動かすより、BtoBで1社を動かすほうが売上への影響は大きいこともあります。
取引先を4つの段階で見る
具体的には、取引先を次の4つに分けて見ることをおすすめします。
| 段階 | 状態 | この段階の課題 |
|---|---|---|
| 新規 | 取引が始まったばかり | 何を扱っているか、まだ知られていない |
| 部分取引 | 一部の商品だけ発注がある | 他の商材が候補に入っていない |
| 主要取引先 | 継続して幅広く発注がある | 競合に切り替えられないよう守る |
| 離れかけ | 発注が減っている / 止まった | 理由を確かめ、戻す手を打つ |
大切なのは、この段階が発注データから自動的に分かるという点です。取引開始からの期間、発注の頻度、扱っている商品の数。受発注がデジタル化されていれば、営業の記憶に頼らずに全取引先を段階で並べられます。

段階ごとに、打つ手は違う
段階が分かれば、手の打ち方も変わります。
新規の取引先には、まず自社の商材の全体像を知ってもらう必要があります。ここで効くのは、発注サイト上で関連商材が自然に目に入る状態にしておくことです。営業が説明しなくても、発注のついでに気づいてもらえます。
部分取引の段階では、扱っていない商材が明確です。同業の取引先がどう使っているかを情報として渡せば、候補に入ります。主要取引先には、切り替えられない関係をつくること。発注のしやすさや在庫の安定は、そのまま参入障壁になります。
そして離れかけた取引先には、早く気づいて連絡することが唯一の手です。BtoBの取引はいきなりゼロにならず、少しずつ減っていきます。その途中で気づけるかどうかで、戻せるかが決まります。
誰が育てるのか——営業と仕組みの分担
最後に、実行の話をします。この4段階すべてを営業が個別に対応するのは、現実的ではありません。取引先が数百社あれば、把握しきれません。
だからこそ分担が必要です。段階を判定し、変化に気づくのは仕組みの役割。そのうえで、どの取引先に何を伝えるかを決めて動くのが営業の役割です。BtoCのCRMがまさにこの形をとっています。データで対象を絞り、人が価値のある働きかけをする。
弊社がBtoB-ECの構築とデータ活用の支援を一緒に手がけているのも、この分担を成り立たせるためです。取引先を段階で見られる状態にすれば、限られた営業の時間を、いま働きかけるべき相手に集中できます。
まずは既存の取引先を10社ほど選び、4つの段階に振り分けてみてください。「部分取引」に入る会社が思ったより多いなら、そこが伸びしろです。
■受発注DXに関する無料相談はこちら
■受発注DXを実現するECデータマネジメントクラウド「ECコネクター®」についてはこちら
〈筆者プロフィール〉
ECコンサルタント K.H
大阪大学を卒業後、新卒でゲーム会社にプランナーとして入社。2023年に株式会社久へジョインし、データアナリストとしてキャリアをスタート。現在はECコンサルタントとして、データドリブンなアプローチを武器に、クライアントの自社公式ECサイトを中心に分析から改善・効果検証まで一貫して支援。2026年より「ブランドEC成長支援室」を兼務し、伴走型コンサルタントとして日々の試行錯誤を重ねながら奮闘中。
プライベートでは茶道表千家講師の顔を持つ一方、アマチュアキックボクシングで心身を鍛える一面も。