BtoBの発注サイトを触ったとき、「使いにくい」と感じた経験はないでしょうか。商品が探しにくく、前回と同じ注文をするのにも手間がかかる。画面は情報が詰まっていて、どこを押せばいいのか分かりにくい。
これは特定の製品の問題ではなく、BtoB-EC全体に共通する傾向です。今回は、なぜそうなるのかという構造と、そこにBtoCの知見をどう持ち込めるかをお伝えします。
「業務システムだから」で許されてきた使いにくさ
BtoB-ECが使いにくい理由は、作られる目的にあります。BtoB-ECは多くの場合、「受発注業務を処理するシステム」として設計されます。求められるのは、取引先ごとの価格が正しく出ること、在庫と連動すること、基幹システムにデータが流れること。つまり機能の正確さです。
一方でBtoCのECサイトは、使いにくければ即座に離脱され、売上が落ちるという前提で作られます。だから検索の精度、商品の探しやすさ、購入までの手数といった点に、絶えず改善の手が入ります。使いやすさが売上に直結するからです。
この違いが、そのまま画面の差になって現れています。BtoB-ECでは「業務で使うものだから、慣れれば問題ない」という考え方が通用してきました。取引先は他に選択肢がなく、使わざるを得なかったからです。
発注しているのは、消費者と同じ人間
しかし、その前提は変わりつつあります。取引先の発注担当者は、業務を離れれば消費者です。日常的にスマートフォンで買い物をし、履歴から数タップで再購入する体験に慣れています。
その人が仕事で発注画面を開いたとき、なぜこんなに手間がかかるのかと感じるのは自然なことです。そして本カテゴリで繰り返しお伝えしてきたように、取引先は使いにくさを口に出さず、静かに電話とFAXに戻ります。使いにくい発注サイトは、利用率が上がらない直接の原因になります。
つまり、BtoB-ECの使いやすさは、快適さの問題ではありません。投資が回収されるかどうかを左右する経営の問題です。

BtoCから持ち込める3つの視点
では、具体的に何を持ち込めるのか。BtoCのEC改善で当たり前に行われている3つの視点を挙げます。
| BtoCで当然のこと | BtoBでの現状 | 持ち込むとどう変わるか |
|---|---|---|
| 検索して見つからなければ改善する | 型番が正確でないと出てこない | 取引先の呼び方・略称でも見つかる |
| 購入までの手数を減らす | 毎回カタログから探して入力 | 履歴から数クリックで再発注できる |
| 離脱した箇所を調べて直す | 発注されなかった理由を追わない | 迷われている画面を特定して直す |
とりわけ効くのが、検索と再発注です。BtoBの発注では、毎回同じ商品が繰り返し注文されます。ここに手間がかかっている状態は、BtoCで言えば「毎回商品を探し直させている」のと同じです。前回の注文を呼び出して数量だけ変えられる。この一つの改善で、発注のたびの負担が大きく変わります。
BtoBだからこそ効く、意外な理由
ここでお伝えしたいのは、使いやすさの改善はBtoBのほうが効果が出やすいという点です。理由は2つあります。
1つは、同じ人が何度も繰り返し使うことです。BtoCでは多くの顧客が年に数回の購入ですが、BtoBの発注担当者は毎週、毎日その画面を開きます。1回の発注で1分短縮できれば、それが年間で数十時間の差になります。改善の効果が積み上がりやすいのです。
もう1つは、使う人が特定されていることです。BtoCでは誰が来るか分かりませんが、BtoBの利用者は自社の取引先です。誰がどこでつまずいたかを追える。改善すべき箇所が具体的に分かり、直したあとに効果も確認できます。BtoCよりむしろ改善しやすい環境だと言えます。
使いやすさは、投資回収の速度を変える
BtoB-ECの構築では、機能の要件に議論が集中します。取引先別価格、掛売り、承認フロー——どれも必要です。しかしそこに「使いやすさ」の観点が入らないと、機能は揃っているのに使われないシステムができ上がります。
弊社がBtoB-ECの支援でBtoCの知見としてUI/UX改善を持ち込んでいるのは、ここに理由があります。業務システムとしての正確さと、消費者向けECで磨かれた使いやすさは、両立できます。そして両立させたときに初めて、取引先が自ら使い続ける状態になります。
まずは自社の発注サイトを、取引先の担当者になったつもりで操作してみてください。前回と同じ注文を出すのに、何回クリックが必要でしょうか。その回数が、使いやすさの現状を教えてくれます。
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〈筆者プロフィール〉
ECコンサルタント K.H
大阪大学を卒業後、新卒でゲーム会社にプランナーとして入社。2023年に株式会社久へジョインし、データアナリストとしてキャリアをスタート。現在はECコンサルタントとして、データドリブンなアプローチを武器に、クライアントの自社公式ECサイトを中心に分析から改善・効果検証まで一貫して支援。2026年より「ブランドEC成長支援室」を兼務し、伴走型コンサルタントとして日々の試行錯誤を重ねながら奮闘中。
プライベートでは茶道表千家講師の顔を持つ一方、アマチュアキックボクシングで心身を鍛える一面も。