BtoB受注データが営業部門で止まっている|部門をまたいで需要情報を流す仕組み

ECデータ 受発注DX

過去コラムでは、受注データを営業が使い、既存取引先から売上を伸ばす攻め手をお伝えしました。今回はその同じデータを、調達や生産の判断にも活用するという話です。受発注のデジタル化で価値が高い情報は、実は営業部門の中に溜まっています。それが他部門に流れていないために、判断が数週間遅れる——この構造を解きます。

需要の最新情報は、営業部門にしかない

仕入れや生産の判断は、多くの会社で前年実績や担当者の経験をもとに行われます。それ自体が悪いわけではありません。問題は、もっと新しい情報が社内にあるのに使われていないことです。

受注データは、いま何が動いているかを示す最も新しい需要情報です。どの商品の発注が増えているか、どの取引先が動き始めたか。デジタル化されていれば、これは翌日には分かります。ところがその情報は受注・営業部門の中で完結し、仕入れ担当が見るのは月次の売上実績だけ——ということがあります。

部門をまたぐと、情報は必ず遅れる

たとえば、ある商品の発注がこの2か月で明確に増えているとします。営業は肌で感じています。しかし仕入れ担当がその情報を受け取るのは、月次会議で売上実績を見たときです。そこから発注量を見直し、納品されるまでにさらに時間がかかる。

この遅れのあいだに欠品が起きれば、取引先はその場で他社から仕入れます。逆に動きが落ちている商品の情報が伝わらなければ、仕入れは前年並みに続き、在庫として積み上がります。

重要なのは、これが誰のミスでもないという点です。営業は伝えたつもりで、仕入れは知らされていない。部門をまたぐ情報は、意識して流す仕組みをつくらないと遅れます。個人の努力ではなく、業務として設計すべき対象です。

BtoBの強みは「予定が読めること」

ここでBtoBの構造的な強みを押さえておきたいと思います。BtoCの購買は気分や流行に左右されますが、BtoBの発注は取引先の生産計画や販売計画に沿って行われます。つまり、需要が比較的読みやすいのです。

Web発注の仕組みがあれば、定期的に発注される商品の周期が記録に残ります。さらに、見積依頼が出た段階や、カートに入れたまま発注されていない段階の動きも残ります。これらは確定した注文ではありませんが、近い将来の需要を示す手がかりです。

この“注文になる前の情報”を調達側が知っていれば、先に構えられます。BtoBは需要が読めるという強みを、部門間の情報共有によって初めて活かせるようになります。

データを流すのは、システムより先に会議体

こう聞くと「連携システムやダッシュボードが必要だ」と考えたくなりますが、順番が逆です。まず必要なのは、データを見て話す場です。

やること頻度参加者
発注が伸びた商品/落ちた商品の一覧を共有週1回営業・受注・仕入れ
定期発注の周期と、見積依頼の動きを確認月1回営業・仕入れ
欠品した商品と、その原因を振り返る月1回受注・仕入れ・(必要なら生産)

表にすると当たり前のことかもしれませんが、この場をきちんと設計しているかどうかが分かれ道になります。逆に言えば、システム投資をする前に、定期的な共有だけで判断の速度は変わります。仕組みが必要になるのは、この習慣が定着してからです。

必要なのは高度な分析ではなく“流れ”

なお、共有した情報をもとに在庫をどう調整するかという判断には、専門的な手法があります。在庫投資の効率を測るGMROI、需要の安定性で商品を分類する手法、統計モデルを使った需要予測などです。これらは別コラム【データサイエンティストの分析録④】にて詳しく解説されていますので、実務に入る際はそちらを参照してください。

業務としてまず整えるべきなのは、その手前です。誰が、どの情報を、いつ、どの部門に渡すのか。この流れさえできていれば、分析の高度化は後からでも進められます。逆に流れがなければ、どれだけ精緻な分析基盤を入れても、判断は変わりません。

まずは直近3か月で発注が伸びた商品と落ちた商品を、それぞれ5つずつ書き出してみてください。その一覧を仕入れ担当に見せたとき、相手が「知らなかった」と言うなら、そこが最初に直すべき箇所です。

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〈筆者プロフィール〉
ECコンサルタント K.H

大阪大学を卒業後、新卒でゲーム会社にプランナーとして入社。2023年に株式会社久へジョインし、データアナリストとしてキャリアをスタート。現在はECコンサルタントとして、データドリブンなアプローチを武器に、クライアントの自社公式ECサイトを中心に分析から改善・効果検証まで一貫して支援。2026年より「ブランドEC成長支援室」を兼務し、伴走型コンサルタントとして日々の試行錯誤を重ねながら奮闘中。
プライベートでは茶道表千家講師の顔を持つ一方、アマチュアキックボクシングで心身を鍛える一面も。